高校の時に書いた小説
多摩動物園の昆虫館で大量のゴキブリが飼育されていました。
そこで思い出したのが高校の時に書いた小説です。
差別的な用語は変更していますがほぼほぼ当時のままです。
それでは「ゴキブリのささやき」の開幕です。
ゴキブリのささやき
平成十六年八月一日、私はゴキブリと呼ばれる生命体として誕生した。
私が初めに見たのは、父と母そして共に生まれた仲間達だった。
父は私に、アーサーという名前を付けてくれた。
けれども、今はまだ生まれたばかりで、
この世界のことが良く分からない。
でも父と母は、私と共に生まれた仲間達に優しく接してくれた。
八月二日、私は歩き回って、ひたすら匂いのする方向に進んで行った。
しだいに甘い匂いが、触覚上の鼻に伝わってくる。
私は好奇心を燃やしながらカサコソと音をたてながら走り、徐々に速度を上げた。
やっとの思いで匂いのする物の前にたどりついた。
そして食べてみた。
とても甘くて口の中でだんだんやわらかくなり、とてもおいしかった。
「お~い、生まれたてのボーヤがリンメル(クッキー)を見つけたぞ~」
「あっ、あなたは?」
私はおどおどしながら聞いた。
「オレか、オレはスプリングス・ノウ。スプリングスで良いよ。おまえさんは?」
「私は、アーサー・サングレット。アーサーでいいです。」
「おーい、リンメルがあるって本当か?」
数匹近寄ってきた。
「おうっ。このボウズが見つけたんだ。」スプリングスが呼んだ。
「ほお~。こりゃ見事なリンメルだ。」一匹が言った。
「ほんとほんと。」「さっそくみんなで食べようぜ。」
「あの~、あなた達は?。」・・・・
「おっと、まだ言ってなかったな。」
「オレはグリップ。こっちの太ってんのがマイケン、あとは弟のジャン、
それと彼女はピンキー、あと妻のカーナだ。」
「さて、オレ達も一緒に食べてもいいかな~?」スプリングスが言った。
「ええ、どうぞどうぞ。」私はうれしくなってきた。
私達がリンメルを食べようとしたその時、
「ドス~ン、ドス~ン、」と大きな音が辺りに響いた。
一瞬、みんなの動きが止まった。
あたりが薄暗くおおわれていった。・・・・
「ゴッ、ゴッ、ゴキッブ、ブッリ~。」
すごい音が鳴り渡った。
「にげろ~。」スプリングスが大声で叫んだ。
「わ~~~っ」マイケンが叫ぶ。
「バシッバシッ」
とてつもない音と風圧が私達をおそう。
「マイケンっ、速くっ、急げ~」スプリングスが叫びまくる。
「ハアッ、ハアッ。」マイケンは必死で逃げた。
しかし、「バシッ」という音とともに、マイケルは動かなくなった。
「マ~イケ~ンッ!」
グリップが大声で叫びながらマイケンの所へ行こうとした。
「行くなっ!」スプリングスがグリップを押さえた。
くっそ~モンステュ(人間)め~」グリップは泣きながら怒鳴った。
私には何が起こったのか分からなかった。
あの巨大な影は一体、そしてゴキブリとは何なのか。
そして、マイケンが死んでしまった事がとても、とてもショックだった。
時は流れ、私は立派に成虫になりあの影の正体も少し分かってきた。
だからこそ私は、モンステュに一言いっておきたい。
「ゴキブリは生きた化石なんだっ、だからゴキブリを見つけても、
目の色を変えて殺さないで見逃してほしい。」
byゴキブリ(アーサー)